当院では、患者さん一人ひとりの生活や価値観を大切にした医療を実現するため、毎月「PCCMカンファレンス」を開催しています。PCCMとは Patient Centered Clinical Method の略で、日本語では「患者中心の医療」と訳されます。これは、病気だけを見るのではなく、患者さんの生活背景や思いを理解し、医療者と患者さんが協働して治療方針を決めていくという考え方です。家庭医療学・総合診療の根幹をなす考え方で、近年、医療の高度化とともに、患者さんの生活の質(QOL)を重視した支援が求められるようになり、PCCMはその中心的な理念として注目されています。
当院のPCCMカンファレンスは、地域包括ケア病棟の入院患者さんを対象に、月1回の定例として実施しています。特徴は、医師、看護師、リハビリスタッフ、薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカーなど、さまざまな職種が参加する「多職種参加型」であることです。患者さんの病状だけでなく、退院後の生活環境、家族の支援状況、必要な社会資源などを総合的に検討し、より良い支援につなげることを目的としています。
カンファレンスでは、まず担当スタッフが患者さんの現在の状態を共有します。病気の経過や治療内容だけでなく、患者さんの「生活歴」「価値観」「家族関係や支援者の存在」「ご本人がどのような生活を望んでいるか」といった多方面からの情報を丁寧に確認します。各職種が専門的な視点から意見を出し合い、退院後の生活を見据えた支援策や療養方針を検討します。多角的な視点が集まることで、患者さんにとって最適な支援プランが形づくられていきます。
PCCMの理念において特に大切なのは、患者さん自身の思いを尊重することです。カンファレンスでは「どこで生活したいか」「どのようなことに不安を感じているか」といった患者さんの声を中心に議論が進みます。医療者が一方的に方針を決めるのではなく、患者さんの希望を踏まえたうえで、実現可能な支援を一緒に考えていくことがPCCMの本質です。
当院では、こうした取り組みを通じて、患者さんが安心して退院し、地域でその人らしい生活を続けられるよう支援しています。PCCMカンファレンスは、医療と生活をつなぐ大切な場であり、地域の皆さまに寄り添う医療を実現するための重要な取り組みです。これからも多職種が協力し、患者さんの思いに耳を傾けながら、より良い医療と支援を提供してまいります。